シャーロック・ホームズと私(弁護士兒玉修一)

                  

 私は、特にミステリー小説好きというわけではありません。ただ、子どもの時から何回読んでも、その都度楽しいのが一連の「シャーロック・ホームズ」シリーズになります。著者はコナン・ドイル氏、長編が4編、短編が56編の合計60編あります。小説の舞台は、主に前々世紀末から前世紀初頭のロンドン。ホームズやその相棒であるワトソン博士の移動は勿論馬車で、遠方には汽車を使うといった感じです。通信手段も、手紙、電報や新聞広告で電話はありません。
 私が初めて読んだのは「シャーロックホームズの冒険」の1編目に収められている「ボヘミアの醜聞」です。小学生の時、誕生日に3冊組の偕成社文庫を買ってもらいました。あまりに面白いので全12編を一気に読了したことを覚えています。ただし、その後は、主に、新潮文庫のホームズシリーズを読んでいます。同シリーズは、訳者が延原謙氏なんですが、同氏の翻訳が一番しっくりします。なんだか自分が、ビクトリア朝時代のロンドンにいるような気になります。
 そして、どの編が好きか。ここは、ホームズ好きの中でも議論が分かれるところです。私は、敢えて選ぶとすれば、長編の中では、やはり定番の「バスカヴィル家の犬」、短編の中では「まだらの紐」、「踊る人形」、「瀕死の探偵」でしょうか。
 ちなみに、ホームズシリーズは、実は奈良とも縁が深いことはご存じでしょうか。「高名な依頼人」では、ワトソン博士が聖武天皇と正倉院の宝物の関係について質問されるというシーンがあり驚きます。しかも、キーになる非常に大事な場面で。そもそも、今から約100年も前に、東洋の国の歴史の一コマについて、コナン・ドイル氏はどうして知っていたのかも興味深いところです。 
 さて、そんな私ですが、ロンドン出張の際に、念願叶って「ベーカー街221B」のホームズ宅を訪問することができました。聖地巡礼というやつですね。「パディントン駅」(技師の親指)は、ヒースローエクスプレスの終着駅なので、当然、訪問済み。今後、「ダートムーア」(バスカヴィル家の犬)、「ライヘンバッハの滝」(最後の事件)、ロンドンの「アヘン窟」(唇のねじれた男)や「聖バーソロミュー病院」(緋色の研究)も訪問できれば、もう思い残すことはありません。